ある日の午後に⑭

「そんな人のこと気にしてる場合かっていうの!まったく本当にお人よしだな」と鼻で軽く笑っている。「だって・・・」私は申し訳ない気持ちになっていた。

「時々、エレベータで会ってただろ?」

「え、今何て?」

「そんな話はもういい。俺も時間がないんでね、さっさと降りてくれ」そう言われて、車を降ろされてしまった。

今日はなんていろんなことが起こる日なんだろう。頭の処理能力が追い付かない。

やっぱり彼はあの時の・・・。人違いだと思い込んでいたけど、人違いなんかじゃなかったんだ。

 

ある日の午後に⑬

「今日は、写真にとられたとしても、決定的な証拠にはならないから、安心しなよ。とにかく、興信所使って自分も証拠を集めるんだな」

今日の出来事がまだ信じられなくて、頭の中で整理できていなかった。

「ここは○○ホテルの地下駐車場だから、そのエレベータで上がって、おもてのタクシー拾って帰りな」さっさと降りろとせかされているようだ。「今日はありがとうございました。あの・・・あなたは今日、私を助けてくれたけど、あなたは依頼された仕事を失敗したことになるんじゃ・・・」

ある日の午後に⑫

「あんたまさか、自分を責めてるんじゃないだろうな、悲劇のヒロインぶってるばあいじゃないつーの!あんたの旦那は、昔から派手に遊んでて、女関係も相当だった。この辺りじゃ有名な話しだよ、そんなことも知らずに、結婚しちまったのか?まいったな」

そんな風に言われると、主人と出会ったきっかけってどんなんだったかな?確かに、主人は社交的で交友関係も広かった。でも、私に対しては誠実で彼の人柄に疑問を持つことはなかった、なのに・・・

「私はどうしたら・・・」すがるような気持ちだった。自分でもほんとにどうしていいか全くわからなかった。

「ほんとに、人がいいっていうか、のんきな人だね~。普通の女なら、そんな話聞いた時点で怒り狂ってるって!俺が女なら、どうやって復讐してやろうかってさ」

 

依頼の内容①

現在妊娠6ヶ月。信じたくないけれど 夫が浮気をしているかもしれないです。私が知る限りこの世で最も誠実な人だと思っていたのに・・・なぜそんな疑惑を抱くようになってしまったのかというとまあ、よくある話で夫の携帯電話を見てしまってからなんです。今って昔と違ってメールじゃなくてラインだから、通知を切ってないとラインが来たときに画面に文章の冒頭が出てしまうんです。それをうっかり見てしまったんですよね・・・。本当に青天の霹靂と言いますか天地がひっくり返ったような気持ちになりました。「昨日はご迷惑おかけしました。なにからなにまでお世話になってしまって」次のラインの通知には「ごめんなさい、奥さんもいるのに。」って・・・。その日の朝帰りについて、酔いすぎた後輩がいたからファミレスでオールしたって言ってたんですけど信じられるわけないですよ。とにかく私は真実を知りたいだけなのです!浮気調査どうかよろしくお願いします。

ある日の午後に⑪

結婚してから今日まで、主人の疑わしい行動なんて、一つもなかったはずなのに、私はなにを見てきたんだろう・・・他に女性がいたなんて信じられない。仕事で遅くなる時や出張はあったけど、ちゃんと連絡はくれたし、むしろ、わたしが仕事に支障をきたすんじゃないか?って心配になるくらい、まめに連絡をくれていた・・・それってもしかして、こちらから連絡を入れさせないため?それにしても一方的に離婚だなんて、私の何がいけなかったんだろう・・・

 

 

ある日の午後に⑨

ひとしきり笑い終えると彼はポケットから1枚の紙を出して、「ここに連絡してみてよ」

差し出されるままに紙を受けとると、差し出された紙は名刺だった。

〇〇探偵社・・・

「探偵・・・なぜそんなところに」戸惑っていると、「そこは信用できるところだから、逆に旦那の浮気の証拠を集めておくといい。あんたの旦那はあんたをはめようとしている、あんたも少しはしたたかになった方がいい、現実を知ったほうがいいぜ」

ある日の午後に⑧

どれだけ時間が経ったかわからない・・・。

ようやく頭の回路が働き出した。

私の隣に座っている男は、主人に雇われて、私と浮気をするように依頼されている。旦那には別に女の人がいて、私と離婚を望んでいる・・・しかもそれを楽しもうとしている。

「なぜ、私に事情を話してくれたの?」

「なんか、かわいそうになった。あんたお人よしで、人を疑うことを知らない人間に見えたから・・・それにさ、まさかこんなに簡単についてくると思わなくて、拍子抜けしちゃってさ」といいながら、笑い始めた。「しかも、まだ仕掛けてもいないのに、あんたの方から、すごい視線送ってくるし」とまた、クククっとこらえるように笑い出した。

 

ある日の午後に⑦

「離婚?なんで、そんなこと・・・」今まで離婚しようと言われたこともないし、夫婦仲はいい方だと思っていたし、大きな喧嘩もなく、そろそろ子供も欲しいと話をしていたのになぜ急にそんなこと・・・まったく自分では理由がわからない。

戸惑っている私に、「わかんないの?」聞いてきた。うなずく私に彼は憐れむようなかを担った。「要するに、あんたの旦那には別の女がいて、その女と一緒になりたいから、あんたが邪魔になったってことだね。離婚するだけなら、なんとでも理由付ければ済む話だけど、奴はゲームでも楽しむように、この計画立てて、俺に依頼してきたってわけだ」

 

ある日の午後に⑥

どこをどう走ったかは覚えていないが、着いたところは暗い地下駐車場のような所だった。

「ここどこですか?」何が何だかわからず、上ずった声で聞くと、「しっ、伏せて」と頭を押さえこまれた。されるがままに身を地締めていると、しばらくして、「大丈夫だ」とようやく解放された。

「あんたの旦那、相当やばいよ」

「えっ?主人をしってるの?」

「ああ、あんたの旦那に仕事を依頼された、あんたと浮気しろってね」

意味がわからない・・・私に浮気をさせるって、どういうこと?

「あんたの旦那は、あんたに浮気をさせて、その現場を押さえて、手っ取り早く離婚しようとしてるわけよ」

ある日の午後に⑤

結局、車に乗せられ、あてもなくドライブすることになった。

どうしよう・・・だれかに見られていたら・・・。こんなこと主人に知られたら、どうなるんだろう。どうしょうの文字が頭の中にいっぱいになった。黙ってうつむいている私に、「そんなに気になる?」

「えっ?」

「誰かに見られちゃまずいって思ってるんでしょ」

ますます、顔があげれなくなってしまった。

「じゃ、誰にも見られないところに行こうか」と私の意見も聞かずに、いきなり急ハンドルで交差点を右折した。